今回登場するのは、フォトグラファーとして活躍する北村です。
スタジオ撮影からロケーション撮影まで、さまざまなシチュエーションで、その人らしさを引き出す撮影を手がけています。
かつては人見知りで接客に苦手意識を持っていたそうですが、今では「カメラマンとしてのキャラクター」を自分なりに確立し、お客様一人ひとりの空気感に寄り添いながら撮影を行っています。
フォトグラファーとしての信念、撮影中に流れた涙、そして「ありがとう」の言葉に支えられてきた日々について語ってもらいました。
「カメラマン」というキャラクターを演じながら、お客様を楽しませる

―この仕事を始めたきっかけを教えてください。
もともとディズニーランドが大好きで、ショーやパレードをカメラで撮るのが趣味だったこともあって、「一瞬を切り取る」面白さに、どんどん惹かれていきました。
最終的にお芝居の道には進まず、ホテル業界を経て、ウェディングの世界に入ることになりました。ただ、当初は接客が得意ではなく、むしろ避けてきたタイプだったんです。
そんな自分にとっての“接客の先生”は、ディズニーのキャストさんでした。言葉の選び方やジェスチャー、笑顔のつくり方などを参考にしながら、お客様にとって心地よい空間を意識してきました。
例えば静かな方には声のトーンを抑えて、少しずつ距離を縮めていく。場が和んできたら、ちょっと冗談を交えてみる。その場の空気感を感じながら、相手に合わせて丁寧に接するようにしています。
撮影中は、一瞬の“笑顔のタネ”を見逃さないようにも心がけています。親御さんの期待や緊張感の中で、お嬢様が自然に笑えるような距離感を大切にしています。
今は、写真を撮ること以上に、「楽しませること」そのものが好きなのかもしれません。本当に、楽しく仕事ができています。
トレンドも現場での引き出しも、常にアップデート

―スキルやトレンドはどう学ばれていますか?
Instagramでのトレンドスタイルは、日頃からよくチェックしています。
お客様の中には、具体的なイメージや“推しアイテム”を持参される方もいらっしゃるので、VTuberやK-POP、アニメなど、さまざまな話題に少しでも触れられるよう意識しています。
もちろん、すべてを深く把握するのは難しいですが、少しでも「話せる引き出し」を持っておくことが、撮影時の空気づくりに役立つと感じています。
撮影では、お客様ご自身の“らしさ”を何よりも大切にしていますが、今後はもっと新しい視点でのロケーション開拓や、こちらからご提案するスタイルの撮影にも挑戦していきたいですね。
最終的には、「あの人に撮ってもらいたい」と思っていただけるような存在になりたいです。そのためにも、撮影技術はもちろん、人との接し方や空気のつくり方も、これからさらに磨いていきたいと思っています。
お客様からの「ありがとう」に支えられて、今の自分がある

―フォトグラファーというお仕事をしていて嬉しかったことや、印象に残っているエピソードはありますか?
お客様から「ありがとう」と言っていただける瞬間が、やはり何よりも嬉しいです。
後日、偶然お会いした際に「写真すごく良かったです」と声をかけていただくことがあって。そんなときは、本当にこの仕事をやっていてよかったなと感じます。
特に印象に残っているのは、成人式の前撮りでのお嬢様とお母様のエピソードです。
最初はお嬢様の表情が硬く、少しだけ親子の温度感に差があるように感じていました。撮影中に少しずつ会話を重ねるうちに、お嬢様の表情がやわらぎ、最後には自然な笑顔を見せてくれて。
その笑顔を見たお母様もとても安心されたご様子で、スタジオの空気が柔らかくなったのを今でもはっきり覚えています。
逆に、自分の中で納得のいく仕上がりにできなかった撮影もありました。
悔しさと情けなさでしばらく落ち込んでいたのですが、後日そのお客様から「本当にありがとうございました」というメールをいただいたんです。申し訳なさと感謝の気持ちが一気に押し寄せてきて、思わず涙がこぼれました。
お客様にとって、たった一枚の写真がどれだけ大切なものになるのか。日々、その重みを感じながら撮影に向き合っています。
だからこそ、自分の撮る写真がその記憶の一部になれているなら、それ以上のやりがいはありません。
どれだけ淡々とシャッターを切っていても、1枚の写真には、必ずその場の空気や感情が映ると思っています。だから私は、どんな時も空気づくりを何よりも大切にしています。